捨てている
世界の食料3分の1は
捨てられている。
飢餓は「足りない」から起きるのではありません。
ニュースを見るとつい「食料が足りないんだ」と思ってしまいます。でも違うのです。足りています。むしろ余って、捨てているのです。
毎日10億食分が捨てられている。
世界で生産される食料のおよそ3分の1が食べられないまま失われるか捨てられています。FAOの推計で年に約13億トンです。
UNEPの2024年版(2022年データ)では廃棄だけで10.5億トンにのぼります。消費段階で約19%が捨てられそこに供給網での損失約13%が乗ります。合わせてざっと3割が口に入らないまま消えていくのです。
ではその廃棄をいちばん出しているのは誰でしょうか。工場でも巨大スーパーでもありません。約6割が家庭から出ています。2022年の廃棄10.5億トンのうち6.31億トンが家庭、外食が28%、小売はわずか12%です。最大の廃棄者は企業ではなく冷蔵庫の前に立っているわたしたちのほうなのです。
足元の日本も同じです。2023年度の食品ロスは464万トン。国民1人あたり年37kg。毎日おにぎり1個分を捨てている計算です。
内訳を見るとさらに静かに深刻です。家庭系233万トンのうち最も多いのは食べ残しではありません。未開封のまま捨てる「直接廃棄」が100万トン。買って、しまって、忘れて、期限が切れて、開けずに捨てる。金額に直すと食品ロス全体で年4.0兆円、1人あたり31,814円が生ゴミの袋に入っています。
ただし日本の数字は1つだけ別のことも証明しています。2000年度比の半減目標をすでに達成したという事実です(事業系57.8%減・家庭系46.1%減)。事業系は目標を8年前倒しで達成しました。減らせないのではありません。減らせると証明された上で世界は捨て続けているのです。
その裏で7.3億人が飢えている。
同じ地球で7.3億人が飢えています。世界人口の約3割が食料不安のなかにいます。これは軍事費の話とまったく同じ構造です。
軍事費(FILE.02)
お金はあります。向け先を変えていないだけです。飢餓は軍事費5日分で1年なくせます。
食料(FILE.05)
食べ物はあります。捨てているだけです。米欧の食べ残しの一部で足ります。
「できない」のではありません。「していない」のです。飢餓は供給の問題ではなく分配と廃棄の問題なのです。
8億人は先進国の食べ残しの4分の1未満で養える。
8億人超の飢餓人口は米国と欧州で捨てられる食料の4分の1未満で養えます。世界全体の話ですらありません。先進国の食べ残しの一部で足りるのです。
さらに冷蔵・物流(コールドチェーン)の不備で傷んで失われる分があります。これだけで推定10億人を養える量です。誰かが食べる前にただ腐らせているのです。
UNEPはこうも言っています。家庭が毎日捨てる量だけで——供給網の損失すら数えずに——飢えている7.3億人全員に毎日1.3食を配れる計算になります。足りないのではありません。最初から、毎日余っているのです。
足りないのではなく分けていないだけだ
3分の1はたぶん甘い。
この「3分の1」はFAOの2011年の研究がベースでもう古い数字です。しかも畑に置き去りにされた作物など農場段階の損失が入っていません。
これを足すと実際は約40%に達するという新しいデータ(テスコ/WWF)もあります。自国の食品ロスを実際に測っている国に住む人は世界人口の12%しかいません。残りは推計の上の推計です。つまり実態は3分の1より悪い可能性が高いのです。
「食品ロス」が国ならCO2排出は世界3位。
食料の生産から廃棄までで世界の温室効果ガスの8〜10%を出しています。航空業界の約5倍です。仮に一つの国だったとすればその排出量は中国・米国に次ぐ規模になります。
金額にすれば世界が毎年捨てている食料の価値はおよそ1兆ドルです。食べ物そのものだけでなくそれを育てるのに使った土地・水・燃料・人手ごとまとめて捨てているのです。
飢餓は作れていないから起きるんじゃない。
作って捨てているから起きる。
作っても運びきれず腐らせ、買っても忘れて捨てています。その途中で地球の裏側の誰かが飢えています。足りないのではありません。捨てているのです。それだけがずっと変わりません。